当会の提案

子ども養育支援基本法(仮称)

 第一章 総則

(目的・解釈運用指針)

第一条

この法律は、子どもを取り巻く父母その他の子どもを保護すべき者すべてが、子どもの健やかな成長発達を守り、子どもの最善の利益を最優先するとともに、親子の面会交流や養育費の履行など子どもの養育に関して、基本理念を定め、国等の責務を明らかにし、子どもの最善の利益及び親子の親密かつ継続的な関係を適切に維持 するための基本となる事項を定めることにより、子どもの養育支援を総合的に推進することを目的とする。

2  この法律は、児童の権利に関する条約が、児童はできるかぎり父母を知りかつその父母によって養育される権利を有すること(同7条1項)、父母の一方又は双方から分離されている児童が定期的に父母のいずれとも人的な関係及び直接の接触を維持する権利を尊重すること(同9条3項)、児童が自由に自己の意見を表明する権利を確保すること(同12条1項)、児童の養育及び発達について父母が共同の責任を有するという原則を明示していること(同18条1項)に鑑み、その適切な解釈及び運用がなされなければならない。

(基本理念)

第二条 子どもの養育支援は、子ども等に対する父母等の面会交流、養育費その他の子どもの養育に関する取決めの促進、子ども養育のための教育支援、生活支援、就労支援、経済的支援、法的支援や子ども養育に関する取決めの実 現のための支援等の施策を、子どもの健やかな成長と子どもの最善の利益を実現することを旨として講ずることにより、推進されなければならない。

2  子どもの養育支援は、国及び地方公共団体の関係機関相互の密接な連携の下に、関連分野における総合的な取組として行われなければならない。

(国の責務)

第三条  国は、前条の基本理念(次条において「基本理念」という。)にのっとり、子どもの養育支援を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。

(地方公共団体の責務)

第四条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、子ども養育支援に関し、国と協力しつつ、当該地域の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

(国民の責務)

第五条 国民は、国又は地方公共団体が実施する子どもの養育支援に協力するよう努めなければならない。

(法制上の措置等)

第六条  政府は、この法律の目的を達成するため、必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。

(子ども養育支援の実施状況及び子ども養育に関する合意形成支援及び実現のための支援の実施状況の公表)

第七条 政府は、毎年一回、子ども養育支援の実施状況及び子ども養育に関する合意形成支援及び実現のための支援の実施状況を公表しなければならない。

第二章 基本的施策

(子ども養育支援に関する大綱)

第八条 政府は、子ども養育支援を総合的に推進するため、子どもの養育支援に関する大綱(以下「大綱」という。)を定めなければならない。

2  大綱は、次に掲げる事項について定めるものとする。

一  子ども養育支援対策に関する基本的な方針

二  子ども面会交流の取決め及び実施率、養育費の取決め及び実施率 、ひとり親の生活状況等子ども養育に関する指標及び当該指標の改善に向けた施策

三  子ども養育に関する教育の支援、生活の支援、保護者に対する就労の支援、経済的支援、法的支援その他の子ども養育支援に関する事項

四  子ども養育の合意形成支援及び実現支援に関する調査及び研究に関する事項

3  内閣総理大臣は、大綱の案につき閣議の決定を求めなければならない。

4  内閣総理大臣は、前項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、大綱を公表しなければならない。

5  前二項の規定は、大綱の変更について準用する。

6  第二項第二号の「子ども面会交流の取決め及び実施率」及び「養育費の取決め及び実施率」の定義は、政令で定める。

(都道府県子ども養育支援基本計画)

第九条  都道府県は、大綱を勘案して、当該都道府県における子ども養育支援についての計画(次項において「計画」という。)を定めるよう努めるものとする。

2都道府県は、計画を定め、又は変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

(教育的支援)

第十条 国及び地方公共団体は、子ども養育のための教育プログラム、離婚や別居の際の教育的ガイダンスの実施、その他の子ども養育に関する教育的支援のために必要な施策を講ずるものとする。

(生活面の支援)

第十一条 国及び地方公共団体は、面会交流や養育費等の子ども養育に関する子ども及びその保護者に対する生活相談、その他の要支援の状況にある子ども及び保護者に対する生活面の支援のために必要な施策を講ずるものとする。

(保護者に対する法的心理的社会的支援)

第十二条 国及び地方公共団体は、子どもの養育支援を求める保護者に対する相談の実施及びガイダンスその他の子どもの保護者の子ども養育に関する合意形成及び実現を図るための支援に関し必要な法的心理的社会的支援の施策を講ずるものとする。

(経済的支援)

第十三条  国及び地方公共団体は、子ども養育を促進するため、保護者及び子どもに対して、各種の手当等の支給、貸付金の貸付けその他の要支援の状況にある子どもに対する経済的支援のために必要な施策を講ずるものとする。

(調査研究)

第十四条 国及び地方公共団体は、子ども養育支援対策を適正に策定し、及び実施するため、子ども養育に関する調査及び研究その他の必要な施策を講ずるものとする。

第三章 子ども養育支援対策会議

(設置及び所掌事務等)

第十五条 内閣府に、特別の機関として、子ども養育支援対策会議(以下「会議」という。)を置く。

2  会議は、次に掲げる事務をつかさどる。

一  大綱の案を作成すること。

二 前号に掲げるもののほか、子ども養育支援対策に関する重要事項について審議し、及び子ども養育支援対策の実施を推進すること。

3  法務大臣は、会議が前項の規定により大綱の案を作成するに当たり、第八条第二項各号に掲げる事項のうち法務省の所掌に属するものに関する部分の素案を作成し、会議に提出しなければならない。

4  厚生労働大臣は、会議が第二項の規定により大綱の案を作成するに当たり、第八条第二項各号に掲げる事項のうち厚生労働省の所掌に属するものに関する部分の素案を作成し、会議に提出しなければならない。

5  内閣総理大臣は、会議が第二項の規定により大綱の案を作成するに当たり、関係行政機関の長の協力を得て、第八条第二項各号に掲げる事項のうち前二項に規定するもの以外のものに関する部分の素案を作成し、会議に提出しなければならない。

(組織等)

第十六条  会議は、会長及び委員をもって組織する。

2  会長は、内閣総理大臣をもって充てる。

3  委員は、会長以外の国務大臣のうちから、内閣総理大臣が指定する者をもって充てる。

4  会議の庶務は、内閣府において法務省、厚生労働省その他の関係行政機関の協力を得て処理する。

5 前各項に定めるもののほか、会議の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。

附 則 抄

(施行期日)

第一条  この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

(検討)

第二条 政府は、この法律の施行後三年を経過した場合において、この法律の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、この法律の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

検討事項

○児童の権利に関する条約を国内的に総合的に推進するための「子どもの権利基本法(仮称)」の制定

○子どもの意思や心情を尊重し、面会交流・養育費、リロケーションその他の子の監護をめぐる紛争の迅速な解決のため法制度及び手続の確立

○子どもに対する適切な情報提供の仕組みの構築、子どもの手続代理人制度の運用の改善

○現行民法の協議離婚制度、子の監護者制度、親権制度の見直し等の子どもの親権・監護法制の見直し

○親子の面会交流の合意形成支援及び円滑な実施のための支援の充実

○養育費の合意形成支援及び履行確保のための制度改革

○基礎自治体及び家庭裁判所等での父母教育プログラムや相談体制の充実

○DV・ストーカー・児童虐待・暴力等の対策の強化

○市区町村、家庭裁判所、児童相談所、警察等の関係諸機関の役割分担と連携の強化

○ひとり親家庭に対する総合的支援策の検討

(文責:早稲田大学教授 棚村 政行)