最高裁第三小法廷2019(平31)年4月26日許可抗告審決定

親権・監護権・子の引渡し

9歳の子につき、子の引渡しを命じる審判を債務名義とする間接強制の申立てを権利の濫用にあたるとした事例

出典
裁判所時報1723号3頁、家庭の法と裁判22号67頁、判例タイムズ1461号23頁
事案の概要

父は子ら3人を連れて実家に転居し、以来夫婦は別居した。奈良家裁審判は子の監護者を母と指定し確定した。2017年、子の引渡しの直接強制執行により、二男及び長女は母に引き渡されたが、9歳の長男は明確に拒絶して泣きじゃくり呼吸困難に陥りそうになった。母から父に対する人身保護請求事件においても、長男は父のもとでの生活を続けたいと陳述し、請求は棄却された。母は、間接強制執行の申立てを行い、原審(大阪高裁平成30年決定)はこれを認め、1日1万円の割合による金員の支払いを父に命じた。父が抗告した。

決定の概要

「以上の経過からすれば、現時点において、長男の心身に有害な影響を及ぼすことのないように配慮しつつ長男の引渡しを実現するため合理的に必要と考えられる抗告人の行為は、具体的に想定することが困難というべきである。このような事情の下において、本件審判を債務名義とする間接強制決定により、抗告人に対して金銭の支払を命じて心理的に圧迫することによって長男の引渡しを強制することは、過酷な執行として許されないと解される。そうすると、このような決定を求める本件申立ては、権利の濫用に当たるというほかない。」とし、間接強制の申立てを却下すべきとし、原決定を破棄して、原々決定を取り消した。(S)