大阪高裁2020(令2)年1月16日決定

親権・監護権・子の引渡し

未成年者の事実上の監護をしている祖母から父母に対し、未成年者の監護者を祖母と指定することを求めた事案で、これを認めた原審判を相当として維持した事例

出典
家庭の法と裁判30号69頁、判例タイムズ1479号51頁
事案の概要

母は、実家にて、実母である祖母とともに未成年者を育てていたが、2010年2月に夫と、未成年者の親権者を母として離婚した。2017年、母は未成年者を実家に置いて男性と同居した。2018年、母は男性と婚姻し、併せて、母が代諾者となって未成年者と男性とは養子縁組した。また、母は、同年、祖母から未成年者を引き取るべく未成年者に係る人身保護請求をしたが、その手続き等の中で、未成年者は母に対し、養父と別れて、母と祖母の3人で生活したいと述べるなどした。成人男性を苦手とする未成年者は、養父を嫌悪し、これに同調する母にも反発して、身体症状が出るとともに、学校も休むようになり、適応障害等の疑いや、母の再婚に関連したストレスから不安等の身体症状があると診断された。母の上記請求は棄却され、上告棄却等により確定した。祖母は、同年、母に対し未成年者の監護者を祖母に指定する調停を申し立て(審判移行)、翌2019年、養父に対しても、同趣旨の審判を申し立てた。原審は、未成年者(当時9歳)の福祉のためには、祖母を監護者として指定し、その安定した監護養育を継続させることが相当であると審判した。母と養父が抗告した。

決定の概要

「子の福祉を全うするためには、民法766条1項の法意に照らし、事実上の監護者である祖父母等も、家庭裁判所に対し、子の監護者指定の申立てをすることができるものと解するのが相当である。」として、事実上の監護をしている祖父母等の監護者指定の申立権を肯定し、そのうえで、「その判断に当たっては、子の福祉の観点を最も重視すべきである。」とし、「上記祖父母等を監護者と定めるためには、上記親権の行使に重大な制約を伴うこととなったとしても、子の福祉の観点からやむを得ないと認められる場合であること、具体的には、親権者の親権の行使が不適当であることなどにより、親権者に子を監護させると、子が心身の健康を害するなど子の健全な成長を阻害するおそれが認められることなどを要すると解するのが相当である。」とした。

本件では、未成年者は、養父に対して嫌悪感、不信感を抱き、養父を強く拒絶していること、母は、養父に追従し、未成年者と養父との家族関係の構築を急ぐあまり、未成年者の意向や心情に対する配慮を欠く行動を繰り返していること、母の言動が原因となって、未成年者は、精神的に不調を来たし、小学校にも通学することができない状況となったこと、未成年者は、本決定時10歳であり、母と養父との同居を拒否し、祖母と二人で生活することを望んでいることなどからすると、上記に該当し、未成年者の監護者を祖母と定めるのが相当であるとした。(I)

※本件は最高裁2021(令3)年3月29日決定(令和2年(許)第14号)に破棄され、家裁審判は取り消された 。