東京高裁2019(令1)年11月12日決定

養育費・婚姻費用

幼児教育・保育の無償化制度が開始されたことを理由とする婚姻費用分担額の減額が認められなかった事例

出典
家庭の法と裁判29号70頁、判例タイムズ1479号59頁
事案の概要

抗告人(夫、原審相手方)と相手方(妻、原審申立人)は、2012年に婚姻した夫婦であり、子が2名(2014年生、2018年生)いる。夫婦は2018年7月から別居し、妻は子2名と生活している。妻は、2018年1月に婚姻費用分担調停を申し立てた。原審は、標準算定方式に基づき婚姻費用の額を算定し、長女の私立幼稚園及びお稽古事の費用については標準算定方式で考慮されている額を超えた額の2分の1(1万6000円)を加算し、婚姻費用分担額を月額25万8800円とし、夫に対しこれらの支払いを命じた。夫は、原審が婚姻費用に加算した月額1万6000円の長女の教育費について、2019年10月から幼児教育・保育の無償化が開始され、私立幼稚園も月額2万5700円までは無償化されるので、教育費の加算に当たっては同額を控除すべきであるなどとして抗告した。

決定の概要

「幼稚園やお稽古事の費用の全部又は一部については、標準算定方式に基づく試算額に加算して婚姻費用分担額を定めるのが、当事者間の衡平に適う」、「幼児教育の無償化は、子の監護者の経済的負担を軽減すること等により子の健全成長の実現を目的とするものであり(子ども・子育て支援法1条参照)、このような公的支援は、私的な扶助を補助する性質を有するにすぎないから、上記制度の開始を理由として令和元年10月からの婚姻費用分担額を減額すべきであるとする抗告人の主張は採用できない。」として、夫の支払うべき婚姻費用の分担額を原審判どおり月額25万8800円とし、精算金は既払分を控除する等して原審判を一部変更した。(KO)