東京高裁2019(令1)年12月19日決定

養育費・婚姻費用

夫が収入の減少を理由に婚姻費用の分担額の減額を求めた事案において、事情の変更を認め、かつ、夫が65歳で受給開始していれば受給できた年金収入をも合算して算定するのが相当であるとして、原審判を一部変更した事例

出典
家庭の法と裁判30号78頁
事案の概要

抗告人(妻)と相手方(夫)は、2018年3月に成立した婚姻費用分担調停において、夫が支払うべき婚姻費用の分担額は月20万円と合意した。夫は、当時、年額1652万円の給与収入を得ていたところ、2018年6月に会社の取締役等を退任して再雇用となり、同年7月からは月額55万円の給与収入を得たが、2019年3月31日には同社を退職し、その後は稼働しておらず、収入は配当のみである。夫は、同年6月に減額を求めて調停を申し立て、審判に移行した。夫は、年金受給資格はあるが受給しておらず、70歳まで受給するつもりはない。原審は、前件調停成立時に前提としていなかった収入状況の大きな変動などの事情の変更が生じ、改めて婚姻費用分担額を定めるのが相当であるとして、①2018年7月から2019年3月までは月額15万2000円、②同年4月からは配当収入のみを基礎として算定した月額3万2000円と変更した。妻は、これを不服として抗告した。

決定の概要

夫の稼働状況及び収入の大きな変動により、合意された婚姻費用を変更するのが相当とした。そして、②について、「同居する夫婦の間では、年金収入はその共同生活の糧とするのが通常であることからすると、これを相手方の独自の判断で受給しないこととしたからといって、その収入がないものとして婚姻費用の算定をするのは相当とはいえない。」として、配当収入に加え、夫が65歳で年金の受給を開始していれば受給できる金額を基礎収入に加算して分担額算定の基礎とした。したがって、夫が支払うべき額を月9万2000円と変更して、原審判を一部変更した。なお、現在受給していない年金収入を基礎としたことにつき、「このような取り扱いをする以上、今後、実際に相手方が年金の受給を開始し、受給開始時期との関係で前記の金額よりも高額な年金を受給できたとしても、基本的には、当該高額な年金の受給に基づいて婚姻費用の算定をすることはできず、この事実をもって、婚姻費用を変更すべき事情に当たるものと認めることもできないということになる。」と付言した。(B)