最高裁2018(平30)年3月15日判決

ハーグ実施法

国外に連れ去られた子の釈放を求める人身保護請求において、ハーグ条約実施法に基づく返還決定に従わないまま子を監護していることには拘束の顕著な違法性があるとされた事例

出典
最高裁判所民事判例集72巻1号17頁、家庭の法と裁判15号65頁、判例タイムズ1450号35頁、判例時報2377号47頁
事案の概要

日本人父母は長男、長女及び子(次男2004年生、米国と日本との重国籍)と米国で住んでいた。母は、2016年1月、父の承諾なく子(当時11歳3か月)とともに来日し、以後日本に住んでいる。父は、東京家裁に同年7月ハーグ条約実施法上の子の返還申立てをした。東京家裁は同年9月返還決定し、同年11月30日確定した。父が代替執行を申立て、返還実施決定を取得した。執行官は、2017年5月解放実施したが、母が激しく抵抗し、子も日本在住を希望し、米国行きを拒絶したため、執行不能となった。父は、同年7月名古屋高裁金沢支部に、母を拘束者として人身保護請求(併せて、カリフォルニア州裁判所に離婚請求し、翌8月、父の単独監護命令を取得)した。子(同年4月から中学生)は、被拘束者代理人に対し、日本での生活を希望し、父と離れたことで安心した面もあるなどと述べ、手続きの説明を受けて理解した。名古屋高裁金沢支部は、2017年11月7日に請求棄却した(身体の自由拘束なし、子の自由表明意思に反する請求、返還命令確定や監護権判決の確定は本件帰趨に影響しない)。父が上告、上告受理申立てをした。

決定の概要

子(被拘束者)が13歳で意思能力を有し、母(被上告人)のもとにとどまるとの意思を表明しているとしても、父との間で意思疎通を行う機会を十分に有していたとはうかがわれず、来日後母に大きく依存して生活せざるを得ない状況にあり、母は、返還を拒否し、子の面前で代替執行に激しく抵抗したことなどの事情の下では、「被拘束者が自由意思に基づいて被上告人の下にとどまっているとはいえない特段の事情があり、被上告人の被拘束者に対する監護は、人身保護法及び同規則にいう拘束に当たる」としたうえで、ハーグ条約実施法に基づく返還命令が確定したにもかかわらず、母がこれに従わないまま子を監護することにより拘束している場合は、その監護を解くことが著しく不当であると認められるような特段の事情のない限り、拘束者による子に対する拘束に顕著な違法性がある、として破棄差戻した。(I)