最高裁2017(平29)年12月21日決定

ハーグ実施法

ハーグ条約実施法に基づき子の返還を命じた終局決定が同法117条1項の規定により変更された事例

出典
最高裁判所裁判集民事257巻63頁、家庭の法と裁判15号84頁、判例タイムズ1449号94頁、判例時報2372号16頁
事案の概要

日本人父母は子らと米国で住んでいた。母は、2014年7月、父の承諾の下に子ら(当時11歳7か月の長男、次男、6歳5か月の長女、三男)とともに帰国し、以後祖父母方に住んでいる。その後子らの米国帰国について父母の意見が対立し、父は、大阪家裁に2015年8月ハーグ条約実施法上の子らの返還申立てをした。家裁での調査では、上の二人は米国返還を強く拒絶し、下の二人は拒否的であった。また、子らはいずれも他のきょうだいと離れたくないと述べた。父は、当時子らを適切に監護養育する経済的基盤がなく、親族等からの継続的な支援を受けることも見込まれなかった。大阪家裁は、2016年1月、申立てを却下(5号拒否事由あり)し、大阪高裁は、同月、上の二人には5号の拒否事由があるが、下の二人は適当な成熟度に達していないので5号に該当せず、重大な危険も認められないので、同法28条1項ただし書により4子とも返還決定した(変更前決定)。父は代替執行を申立てたが、同年9月15日執行不能となった。なお、父は、同年2月米国の自宅を競売され、8月から知人方に居住していた。母は、大阪高裁に同法117条1項に基づく終局決定の変更を申立て、大阪高裁は、2017年2月、終局決定を変更して返還申立てを却下した。父が許可抗告を申立てた。

決定の概要

父は、子らを適切に監護するための経済的基盤を欠いており、その監護養育について親族等から継続的な支援を受けることも見込まれない状況にあったところ、変更前決定の確定後、居住家屋を明け渡し、子らのために安定した住居を確保することができなくなった結果、子らが米国に返還された場合の父による監護養育態勢が看過し得ない程度に悪化したという事情の変更が生じたというべきで、返還を拒否している上二人について、5号の拒否事由があるにもかかわらず米国に返還することは子の利益に資するものとは認められず、ハーグ条約実施法28条1項ただし書により返還を命ずることはできない。下二人のみを返還すると、密接な関係にある兄弟姉妹を分離することになるなど、一切の事情を考慮すると、返還することによって子を耐え難い状況に置くこととなる重大な危険があるというべきで4号の拒否事由があるとし、「変更前決定は、その確定後の事情の変更によってこれを維持することが不当となるに至ったと認めるべきであるから、実施法117条1項の規定によりこれを変更し、本件申立てを却下するのが相当である」とした。(I)