東京高裁2020(令2)年3月4日決定 new!

養育費・婚姻費用

実父が子の養子縁組の可能性を認識しながら調査、確認せず3年余にわたり約720万円の養育費を支払い続けたこと等を考慮し、実父の養育費支払義務が免除される始期は実父が養育費免除の調停を申し立てた月であるとした事例

出典
判例時報 2480号3頁
事案の概要

抗告人(母)と相手方(実父)は、2014年5月、未成年の子3名の養育費として、実父が母に、子らがそれぞれ大学を卒業する月まで、1人当たり月額6万円を支払うこと及び実父と母の親族構成に変化があったときは、遅滞なく他方に通知することなどを合意して協議離婚した。2015年11月、母は再婚し、翌月、再婚相手(養父、原審利害関係参加人)は子らと養子縁組した。2018年の実父の給与収入は年1320万円、養父の課税所得は年3870万円であった。実父は2019年5月、養育費の支払い免除を求めて調停を申し立て、その後審判に移行した。原審は、養子縁組により実父の養育費支払義務は、2015年12月の縁組日から免除されるとした。母と養父とが抗告した。

決定の概要

子が親権者の再婚相手と養子縁組した場合、子の扶養義務は、第1次的には親権者及び養親が負うべきものであり、親権者及び養親がその資力の点で十分に扶養義務を履行できないときに限り、第2次的に実親が負担すべきことになるから、養父が高額の連帯保証債務を負っていることなどの事情があるとしても、抗告人ら(母及び養父)がその資力の点で子らに対して十分に扶養義務を履行できない状況にあるとは言い難いとして、実父の養育費支払義務を免除するのが相当とした。他方で、養育費支払義務の免除の始期については、養子縁組の翌月(2016年1月)以降、実父は合計720万円の養育費と長女の留学に伴う授業料を支払ったもので、既に支払われて費消された過去の養育費につき法的根拠を失わせて多額の返還義務を生じさせることは、抗告人らに不測の損害を被らせること、実父は母から2015年11月に養子縁組をする予定との報告を受けており、養子縁組の有無を調査、確認することが可能な状態にあったこと、実父は子らの福祉の充実の観点から養育費を支払い続けたものと評価することも可能であること等を総合考慮して、実父が養育費の支払い免除の調停を申し立てた2019年5月からに変更した。(B)