仙台高裁2019(令1)年10月4日決定 new!

面会交流

母による面会交流の審判前の保全処分申立てについて、子が拒絶的な姿勢を強めつつあるのは身近な大人の影響によるものであり、この状態を解消するためには早期に未成年者自身の感覚や体験を通して母を理解する機会を設けることが必要であり、母ががんに罹患し余命告知されている状況に鑑みて面会交流を仮に認めた原審の判断を維持した事例

出典
家庭の法と裁判33号59頁
事案の概要

母(相手方、原審申立人)は、2016年、がんと診断され、入院して手術を受けた。その後、父母の関係は悪化し、2017年8月、父は、子(原審審判時小学5年)を連れて実家に転居し、母と別居した。子は父、父の母、父の祖母、叔父との5人暮らしである。同年12月、母は面会交流調停を申し立てた。別居後、母は子に誕生日プレゼントや手紙を送るなどしていたが、2018年1月、父の求めにより子と母とのLINE連絡は中断した。2019年1月、父母は、母の余命が1か月ないし3か月程度であると知った。父は、同年2月の第7回調停期日においても面会に応じる姿勢をみせず、母は調停申立てを取り下げた。同年4月、母は再度、面会交流調停及び本件保全処分の申立てをした。原審は、前回調停時の家裁調査官面接では子は母との生活を全体としては肯定的に受け止めていたが、本件調停時の面接では拒絶的姿勢を強めており、その表現内容から、子自身の体験に基づくというよりも、父やその親族等の母に対する否定的な発言の影響によるもので、子が心身共に健全な成長を遂げるには子の認識を修正し母のイメージを修復していく必要があり(本案認容の蓋然性)、かつ母が余命告知を受けたという状況に照らして面会の機会を早急に設ける必要がある(保全の必要性)と判断し、月1回1時間程度で、父が指定する者の立会いを可能とする面会交流を仮に定めた。父が抗告した。

決定の概要

原審判の認定説示に加え、「未成年者の過剰ともいえる拒絶的な反応をみれば、未成年者は、現在身の回りの世話を頼っている環境において、相手方の情愛を肯定的に受け止められる助言を得られておらず、むしろ、霊的なものによる攻撃等という容易に払拭することができない説明が未成年者に強い影響を及ぼしていることが認められる。未成年者の拒絶的姿勢が、身近な大人の影響によるものであることが、単なる抽象的な可能性であるとはいえない」、「将来、未成年者が母の情に思いを致す時が来るかもしれないことを考慮するとき、自ら面会交流を拒否したというようなことになれば、それは、未成年者に取り返しのつかない悔いを残してしまうことにもなりかねない」とし、母にとって、「面会交流の場で直ちに自らの思いが未成年者に伝わることは期待できず、むしろ未成年者の心情を受け止める機会にとどまることも覚悟すべきではあるが」とも述べた上で、母の病状に鑑みれば、未成年者の福祉のため早期に面会交流を実施すべきであるとして原審の判断を維持した。(B)