岡山家裁2019(令1)年6月21日審判 new!

養育費・婚姻費用

子が成人後外国の大学に進学した費用を、父に求めた扶養料支払請求について、父が既に相当額の養育費等を支払っていることや父にとり子の国外の大学への進学が想定外だったことなどを理由に、申立てを却下した事例

出典
家庭の法と裁判33号111頁
事案の概要

子(申立人、1996年生)の父母は、2014年の和解離婚に際し、父(相手方)は母に対し養育費として、2016年4月(子が成年に達する月)まで月25万円を、その時点で子が大学等に在籍しているときは卒業ないし退学する月まで引続き月25万円を支払う、子が大学等在学中に留学を希望する場合、その費用負担に応じる旨を約した。子は、2015年3月に高校卒業後、希望大学に入ることができず、2016年4月から約1年間英会話学校に通い、2017年6月にa国に渡航してb大学提携の語学学校に通い、2018年1月に2年間在籍する予定でb大学に入学した。子は母から、英会話学校の授業料等として約285万円、b大学の授業料、2016年4月から2018年8月までの生活費として合計約690万円の仕送り等を受けた。子は、a国での生活費及び年2回の渡航費用が必要であると主張した。父は母に対し、2014年9月までに離婚の解決金として2035万円を、2016年10月まで養育費として月25万円を支払った。母は、父に対し、翌月以降の養育費の支払いと留学費用の支払いを求めたが、父は拒否した。父は開業医で、2011年の所得は約5065万円であったが、最近の収入についての資料提出を拒んだ。父は2018年にうつ病と診断され、患者の数を減らしながら業務を続けている。母の2018年の収入は約416万円であった。

決定の概要

成年に達した子は、原則として自活すべきであり、成年に達した子に対する親の扶養義務は生活扶助義務にとどまるが、子が四年制大学に進学し学費や生活費が不足する場合は、諸般の事情を考慮して、扶養料の額を定めることも認められる(東京高裁2010(平成22)年7月30日決定)。我が国では、国外の大学に進学することは一般的ではなく、国外の大学への留学費用は高額になる傾向があることは明らかであり、国外の大学に進学する必要性は国内の四年制大学への進学と比べて小さい。そして、父は、子が国内の大学に進学した上で、一時的に留学することは想定していたものの、国外の大学への進学を承諾していた事情は見当たらず、子や母が父に対し、国外の大学進学を検討していることや費用負担について事前に相談した形跡はないこと、子は国外の大学への進学を成人後に決定しており、その判断による責任は子自身が負うべきであること、父から母には既に多額の解決金や養育費を支払われたことを考えると、子は、母の支援を前提に留学したと考えられる。これらに加え、父の体調が芳しくないことを考え併せると、父に国外の大学進学費用を負担すべき義務を負わせるのは相当でないというべきとして、子の申立てを却下した。(KO)