東京高裁2019(令1)年6月28日決定 new!

親権・監護権・子の引渡し

親権者である養父及び実母から虐待を受け、一時保護の措置がとられている子について、児童相談所長による親権停止の申立てを却下した原審判を取り消し、親権を2年間停止するのが相当であるとした事例

出典
家庭の法と裁判33号72頁
事案の概要

子(2008年生)は、生後8か月以来、乳児院や児童養護施設で育った。他のきょうだいらも2010年までには同じ施設に入所していた。母は2013年に男性と婚姻し、子らは同男性と養子縁組した。親権者らは、その後姉2名を引き取った。子と兄とは、2015年8月頃から親権者ら宅に外泊するようになり、2017年8月、両名につき施設入所措置が解除されて引き取られた。同年12月、子は、屋外で発見され、児童虐待のおそれがあるとして児童相談所長に通告(児童福祉法25条1項本文)がなされた。子につき一時保護の措置をとった同所長は、2018年4月、原審に対し、親権者らの子に対する親権を2年間停止することを求める申し立てをした(同法33条の7)。子(当時小学5年)は、利害関係参加し、上記外泊時や家庭に引き取られた後に、親権者らから暴力を振るわれたり、放置されたりした旨述べ、親権者らの親権停止を希望した。

原審は、親権者らは子に対し相当な頻度で暴力を振るい、食事を抜き、そのために子は親権者らに対して強い恐怖心を抱いていたと認め、一時保護の措置を受ける以前の親権者らの親権の行使は不適当であり、子の利益を害するものであったとしたが、一時保護が行われた現時点では、親権者らは一時保護を妨害する姿勢を示しておらず、親権者らが適切な養育選択を妨げるような行動をとったり、必要な手続への同意など親権者として行うべき行為を理由もなく怠って子の利益を害しているという事情も生じていないことなどから、「子の利益を害する」との要件(民法834条の2第1項)を満たすとはいえないとして、申立てを却下した。これに対し、子と児童相談所長とが抗告した。

決定の概要

親権者らは、子が親権者ら宅で外泊するようになった2015年8月頃から、一時保護の措置がとられた2017年12月頃まで、子に対し、殴る、たたく、屋外に出す、トイレに長時間閉じ込める、食事を抜く、長時間正座をさせる、子の面前で姉を鎖で縛るなどの行為を繰り返していたものと認められ、これが子に対する重大な虐待行為に該当することは明らかである。親権者らの子に対する養育実績はほとんどなく、今後子を適切に養育できると期待することはできない。子は親権者らに強い恐怖心を抱いており、子の今後の健全な成長のためには、親権者らの影響が心理的にも及ばないと子が明確に自覚し得るような環境が必須である。子は親権の停止を希望し、子の原審手続代理人も親権停止が相当であるとの意見を述べている。子が親権者らを拒絶する気持ちは強く、今後、親子として再統合を果たす可能性は極めて小さい。以上によれば、親権者らによる親権の行使が不適当であり、そのことにより子の利益を害することは明らかであるから、民法834条の2を適用し、親権者らの子に対する親権を2年間停止するのが相当であるとした。(KI)