面会交流

No.7

父が調停に基づく面会交流の母の不履行について間接強制を申し立て、子一人、不履行1回につき5万円の支払を命じた原決定を相当であるとした事例

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東京高裁2019(令和元)年11月21日
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家庭の法と裁判37号74頁
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事案の概要

 父と母の間には、長男(2010年生)と二男(2012年生)がおり、母が事実上の監護者であった。2018年10月、父と母との間で、子らと父とが月1回、午前10時から午後2時まで面会交流をする調停が成立した(引渡場所、引渡方法等の具体的定めがある。)。母は、二男の面会交流には応じたが、長男は一度も応じなかった。2019年3月、母は、二男の精神状態が面会交流の前後に不安定になり、二男が面会交流を拒否していることを理由に、父に対し面会交流の中止を申し入れたため、父は、同年4月、間接強制の申立てをした。同年5月の原審審尋期日に子らも出席し、裁判官が意向確認したところ、両者とも父との面会交流を拒絶しておらず父宅での面会交流を希望した。そこで、父母は、同年6月1日及び当月15日の午前10時から午後2時まで父宅で面会交流をする合意をした。しかし、6月1日に長男は父宅に来ず、二男も午前10時45分頃には帰宅した。同月15日には面会交流が実施されなかった。その後、母からショッピングセンター内で2時間の面会交流の提案がなされた。この間の同年7月1日、未成年者ら1人についての不履行1回につき5万円の支払を命じる決定が出され、母が同月9日執行抗告をした。なお、同月8日に、母は、父に対し面会交流の方法を見直すための面会交流調停を申立てた。この後、同年7月及び8月には、母提案の内容で面会交流が実施された。子らは面会交流時、父に拒否的態度を示さなかった。2019年5月には、父と母との間で、子らの親権者を母とし、養育費を子1人につき月4万2500円とする離婚調停が成立した。

決定の概要

 原審の審尋期日で裁判官は子らが面会を拒絶していないことを確認し、その後実施された母提案の面会交流では子らは拒絶的意思を示すことなく面会交流が実施されており、二男の精神状態不安定等に関する医師等の裏付け資料はないので、面会交流の不実施は子らの強固な拒絶意思に基づくものと認めることはできない。したがって、本件不実施は母による面会交流実施義務の不履行であり、母提案の方法での面会交流の実施や母が面会交流方法の協議のため面会交流調停を申し立てていることは間接強制決定を妨げる理由にはならない。養育費が子1人につき月4万2500円であること、その他一切の事情から各子につき不履行1回につき5万円の間接強制金の支払を命ずるのが相当であるとして、抗告を棄却した。(KO)

No.6

父母以外の第三者は事実上子を監護してきた者であっても、子の監護に関する処分として子との面会交流について定める審判を申し立てることはできないとして、祖父母からの面会交流の申立てを不適法とした事例

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最高裁2021(令3)年3月29日決定(令和2年(許)第4号)
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裁判所ウェブサイト
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事案の概要

 父は、婚姻した母と子(2016年生)とともに、母の親である祖父母方で同居していたが、2017年以降家を出て別居した。その後、父は母と交替で子を監護したが、祖父母らは母による監護を補助していた。母が死亡後は父が子を監護している。祖父母らは、子との面会交流を定める審判を申し立てた。

 原審(大阪高裁2019(令1)年11月29日判決)は、父母以外の事実上子を監護してきた第三者が、子との面会交流を認めることが子の利益にかなう場合には、民法766条1項及び2項の類推適用により、子の監護に関する処分として上記の面会交流を認める余地がある、祖父母は母を補助して事実上子を監護してきた者であるから、本件面会交流を認めることが子の利益にかなうか否かなどを審理することなく、本件申立てを不適法として却下することはできない、として、祖父母の申立てを不適法として却下した原々審判を取り消し、原々審に差し戻した。父が許可抗告を申し立て、許可された。

決定の概要

 民法766条1項前段は、父母が協議上の離婚をするときは、子の監護に関する処分として子の監護をすべき者その他必要な事項は、父母が協議をして定めるものとし、これを受けて同条2項は、同条1項の協議の主体である父母の申立てにより、家庭裁判所が子の監護に関する事項を定めることを予定しているものと解される。他方、民法その他の法令において、事実上子を監護してきた第三者が、家庭裁判所に上記事項を定めるよう申し立てることができる旨を定めた規定はなく、監護の事実をもって上記第三者を父母と同視することもできない。子の利益は、子の監護に関する事項を定めるに当たって最も優先して考慮しなければならないが、父母以外の第三者に上記申立てを許容する根拠となるものではない。したがって、父母以外の第三者は、事実上子を監護してきた者であっても、家庭裁判所に対し、子の監護に関する処分としての面会交流を定める審判の申立てをすることはできないと解するのが相当である。祖父母らは、母による子の監護を補助してきたが、子の父母ではないから、家庭裁判所に対し、子との面会交流を定める審判の申立てをすることはできない。祖父母らの本件申立ては、不適法というべきである。子の監護に関する処分の申立てを却下する審判に対して即時抗告をすることができるのは「子の父母及び子の監護者」であり、祖父母らはそのいずれにも該当しないため、原々審判に対する祖父母らの抗告は不適法であるとして、これを却下した。(B)

No.5

未成年者らとの直接的な面会交流は相当でなく、未成年者らの写真の送付及び未成年者らに対する手紙の送付などの間接的な面会交流が相当とされた事例

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大阪高裁2019(令1)年11月20日決定
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家庭の法と裁判34号87頁
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事案の概要

 父母は、2010年に婚姻し、長男(2011年生)、次男(2015年生)、長女(2017年生)をもうけた。2017年12月、母は、子らを連れて父と別居し、2018年1月、父に対し、離婚及び婚姻費用分担調停を申し立てた。これに対し、父は、同年3月、面会交流調停等を申し立てた。父母は、同年10月に親権者を母と定めて調停離婚したが、面会交流調停は同年12月に不成立となり、審判手続に移行した。父は、感情の起伏が激しく、同居時には2度にわたり包丁を自らに突き付けたりした。母は、父のことを考えると怖くなり、裁判所に来るのも体調が悪くなるので、調査のため、子らを裁判所に連れてくるのは難しいが、年に4回程度、子らの写真を父の実家に郵送することは可能である旨述べた。これに対し、父は、第三者機関を利用するなどして面会交流を実現させるよう求めた。

 原審(大阪家裁)は、母が父に対する信頼を失い、かつその突発的な行動に恐怖心を抱いていること、面会交流の実施日が近づくたびに母が体調を崩し、子らに不安や罪悪感を感じさせることから、現時点においては間接的な面会交流とせざるを得ないとし、母に対し、毎年3月、6月、9月及び12月に、未成年者らの写真を合計3枚以上、父の実家宛てに郵送することを命じた。これを不服として、父が即時抗告した。

決定の概要

 原審の認定判断をほぼ是認し、母は、父に対し、面会交流をするための最低限の信頼も有していないこと、父のこれまでの行動に子らが幼いことを併せ考慮すると、安全かつ円滑な直接的面会交流を継続的に実施できるか不安が残ること、母の心情に照らせば、母が面会交流に立ち会うことは困難であり、立会いを引き受ける第三者機関が存在するかどうかなども明らかでないこと、母が面会交流実施前に体調を崩すことになれば、子らが父との面会交流を心理的に負担と感じるようになり、かえって直接的面会交流が子らの福祉を害することとなる恐れも認められるから、現時点においては、直接的面会交流を実施することは困難であるとした。その上で、母に対し、未成年者らの写真を合計3枚以上父に送付することを命ずるとともに、「年4回程度、抗告人が未成年者らに対して手紙を送付することを認め、抗告人から未成年者ら宛ての手紙が届いたときは、これを未成年者らに交付したり読み聞かせたりすることを命ずるのが相当である」とし、原審判を一部変更した。

 なお、できるだけ早期に良好な父子関係を構築することが未成年者らの福祉にかなうとした上で、原審が、長男には父との楽しかった思い出の記憶が残っており、母の拒否的感情が落ち着き未成年者らを面会交流に穏やかに送り出せるようになれば、長男も面会交流に応じられると思料されることから、母へは、父の悪口を言わず、父の悪いイメージを植え付けず、直接的面会交流の実現に努力すること、父へは、穏やかな生活及び感情コントロールに努め、養育費の支払いも努力されたい、と双方への注文を付した部分を引用した。(KI)

No.4

別居親の面会交流権は、憲法上保障されている権利であるとはいえず、国によるその行使を確保するための立法措置の不作為は、国家賠償法上、違法の評価を受けるものとはいえないとした事例

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東京高裁2020(令2)年8月13日判決
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判時2485号27頁
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事案の概要

 夫婦の別居により未成年子と別居することとなった別居親ら14名は、憲法上保障されている別居親と子との面会交流権の権利行使の機会を確保するために立法措置を執ることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたり立法措置を怠ってきたことは、国家賠償法1条1項上の違法な行為に該当すると主張して、国に対し、慰謝料等の支払を求めた。原審(東京地裁)は、原告らの主張を全て認められないとして請求を棄却した。原告らは、これを不服として本件各控訴を提起した。

判決の概要

 別居親の面会交流権は憲法26条の「教育を受ける権利」によって保障されているとの主張については、親の子に対する監護養育が憲法上保護されなければ、子の教育を受ける権利が保障されないとはいえないから、理由がない。別居親の面会交流権は児童の権利に関する条約9条1項、3項によって保障されているとの主張については、同条約9条1項は、子が親から引き離されることのできる場合を限定した規定であって、面会交流について定めたものとみることはできない。子の面会交流の権利を尊重する旨の規定である同条約9条3項を併せても、別居親の面会交流権を保障したものとは解されないから、理由がない。国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律第2章第3節は、親子の「接触の権利」を規定しており、別居親の面会交流権が憲法上又は条約上の権利として保障されていることを裏付けているという主張も、日本国以外の居住者に限定している前記法律16条の定めからして認め難い。国境をまたぐ親子の面会交流については、外務省が関与するのに対し、国内での別居については、何の公的フォローもないという差別的取扱いが放置されているとの憲法14条1項に基づく主張については、上記差異は、事柄の性質に応じた合理的な根拠に基づくものというべきであるから、理由がない。面会交流権は権利としての一義的明確性を有しており、憲法13条により保障されているとの主張については、そもそも、面会交流の法的性質や権利性自体について議論があり、別居親が面会交流の権利を有していることが明らかであるとは認められないから、別居親の面会交流権が憲法上の権利として保障されているとはいえない。憲法24条2項は、離婚等に関する事項について個人の尊厳に立脚して法律を制定することを義務付けるところ、面会交流を保障する法整備を行っていないのは、法の不備にほかならないとの主張については、民法766条等の面会交流に関する法制度(父母の協議、家裁の審判、間接強制)は、別居親と子との面会交流が不当に制約されることがないようにされているものといえ、個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理性を欠くものとはいえないから、理由がない。よって、本件各控訴はいずれも理由がないとして、これらを棄却した。最高裁第二小法廷は、2021(令3)年7月7日上告棄却決定をした。(B)

No.3

母による面会交流の審判前の保全処分申立てについて、子が拒絶的な姿勢を強めつつあるのは身近な大人の影響によるものであり、この状態を解消するためには早期に未成年者自身の感覚や体験を通して母を理解する機会を設けることが必要であり、母ががんに罹患し余命告知されている状況に鑑みて面会交流を仮に認めた原審の判断を維持した事例

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仙台高裁2019(令1)年10月4日決定
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家庭の法と裁判33号59頁
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事案の概要

 母(相手方、原審申立人)は、2016年、がんと診断され、入院して手術を受けた。その後、父母の関係は悪化し、2017年8月、父は、子(原審審判時小学5年)を連れて実家に転居し、母と別居した。子は父、父の母、父の祖母、叔父との5人暮らしである。同年12月、母は面会交流調停を申し立てた。別居後、母は子に誕生日プレゼントや手紙を送るなどしていたが、2018年1月、父の求めにより子と母とのLINE連絡は中断した。2019年1月、父母は、母の余命が1か月ないし3か月程度であると知った。父は、同年2月の第7回調停期日においても面会に応じる姿勢をみせず、母は調停申立てを取り下げた。同年4月、母は再度、面会交流調停及び本件保全処分の申立てをした。

 原審は、前回調停時の家裁調査官面接では子は母との生活を全体としては肯定的に受け止めていたが、本件調停時の面接では拒絶的姿勢を強めており、その表現内容から、子自身の体験に基づくというよりも、父やその親族等の母に対する否定的な発言の影響によるもので、子が心身共に健全な成長を遂げるには子の認識を修正し母のイメージを修復していく必要があり(本案認容の蓋然性)、かつ母が余命告知を受けたという状況に照らして面会の機会を早急に設ける必要がある(保全の必要性)と判断し、月1回1時間程度で、父が指定する者の立会いを可能とする面会交流を仮に定めた。父が抗告した。

決定の概要

 原審判の認定説示に加え、「……未成年者の過剰ともいえる拒絶的な反応をみれば、未成年者は、現在身の回りの世話を頼っている環境において、相手方の情愛を肯定的に受け止められる助言を得られておらず、むしろ、霊的なものによる攻撃等という容易に払拭することができない説明が未成年者に強い影響を及ぼしていることが認められる。未成年者の拒絶的姿勢が、身近な大人の影響によるものであることが、単なる抽象的な可能性であるとはいえない」、「将来、未成年者が母の情に思いを致す時が来るかもしれないことを考慮するとき、自ら面会交流を拒否したというようなことになれば、それは、未成年者に取り返しのつかない悔いを残してしまうことにもなりかねない」とし、母にとって、「面会交流の場で直ちに自らの思いが未成年者に伝わることは期待できず、むしろ未成年者の心情を受け止める機会にとどまることも覚悟すべきではあるが」とも述べた上で、、母の病状に鑑みれば、未成年者の福祉のため早期に面会交流を実施すべきであるとして原審の判断を維持した。(B)

No.2

母が審判で定めた面会交流を実施しないとして父が面会交流調停を申し立て、面会交流の内容を特定して前件審判の主文のうち必要な部分を変更した事例

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福岡家裁2020(令2)年1月10日審判
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家庭の法と裁判30号88頁
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事案の概要

 申立人(父)と相手方(母)は、2010年に婚姻したが、2011年に母が未成年者(2011年生)の出産準備のため実家に戻って以降別居した。別居当初父子は不定期に面会交流を行っていたが、2015年11月に未成年者の親権者を母と定めて離婚してからは実施されなかった。父は2016年11月、面会交流調停を申し立て審判移行となった。審判では、概ね面会交流を実施する月(毎年3月、7月、12月)と回数(各1回)、面会時間(2時間)などが定められたが、面会交流の具体的な日時、場所及び方法については、母が、面会交流をするのであれば当事者間で連絡を取り合い調整する意欲意思を見せていたことから当事者間の協議に委ねることとされた。しかし、母は面会交流義務を履行せず、裁判所による履行勧告にも応じなかったので、父は2019年6月、再度面会交流調停を申し立てた。母は調停期日に出頭しなかったため審判移行となった。

審判の概要

 「申立人と未成年者との面会交流を拒否する相手方の姿勢は強固なものであると認められ」、相手方は「申立人と未成年者との面会交流について、申立人との間で協議することも拒否しているものと認められる」ことからすると、「前件審判の主文に至った理由として説示された、相手方は直接の面会交流には消極的であるものの、面会交流を実施するとなれば、当事者間で連絡を取り合って具体的な調整を行う意思を見せている、という点は、現時点において考慮することはでき」ないとし、「面会交流の確実な実施のためには、監護親である相手方がすべき給付の内容を特定すべきである」としたうえで、日時を「毎年3月、7月、12月の各第4土曜日の午前11時から午後1時まで」、引渡場所を未成年者が見知った場所である大型ショッピングセンター「E前」とするなどして、前件審判の主文を一部変更した。(KO)

No.1

面会交流申立てにつき、間接交流のみを認めた原審判を変更し直接交流を認めた事例

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大阪高裁2019(令1)年11月8日決定
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家庭の法と裁判29号78頁、判時2447号5頁、判タ1476号74頁
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事案の概要

 抗告人(夫)と相手方(妻)は、2010年に婚姻したが、2013年に妻が子ら(2010年生及び2013年生)を連れて出て別居した。2015年に月1回程度の面会交流を定める別居調停が成立した。夫婦の不和の原因には夫の女性関係がある。別居後、父子は面会交流を続け4人で海外旅行をするなどもした。妻は2018年頃から心療内科に通院し、その頃、夫方で交際女性と対面して以来、夫婦の関係は悪化した。夫は面会交流調停を、妻は離婚調停を申立てた。

 原審は、子らは父を慕う気もちはあるが、長女は、夫婦の関係修復に十分に答えない父と面会することは母を悲しませると案じており、面会が長く途絶えることは面会の機会を奪うので、適宜の時期に直接面会の再開について協議を始めるのが相当であるとして、前件調停の実施要領(直接交流)を間接交流に変更した。父が抗告した。

決定の概要

 「長女は抗告人に会いたいと思う一方、相手方の心中を慮って会うことを躊躇するという忠誠葛藤に陥っており、この状態が続けば、長女に過度の精神的負担を強いることになる。したがって、抗告人と未成年者らの直接交流を速やかに再開することが未成年者らの福祉に適うと認めるのが相当である。」「相手方は、抗告人との接触を避けることが望ましいと診断されているが、未成年者らの年齢(9歳、6歳)や発達状況からすると、当事者のいずれかの目が届く範囲の短距離であれば、受渡場所まで未成年者らだけで歩いて行くことは可能であるから、相手方と抗告人が直接対面することなく未成年者らの受渡しができないわけではなくい。したがって、相手方の心身の不調は、直接交流を禁止、制限すべき事由にはならない。」として、原審を変更し、具体的な実施要領を定めて、月1回7時間の直接面会を命じた。(S)