親子交流

No.14 new

間接交流にとどめた原審判を取り消し、試行的面会交流を積極的に検討し、その結果をも踏まえて直接交流の可否等を定める必要があるとして、原審に差し戻した事例

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東京高裁2023(令5)年11月30日決定
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家庭の法と裁判52号82頁
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事案の概要

 父母は2019年に婚姻し、2020年に子をもうけた。母は、父が家事等に協力的でないと不満を持ち、父も、母の非難に反発して感情的になることがあった。同年8月、父母は子の面前で喧嘩し、警察から面前DVとして児童相談所に通告された。母は、市の女性相談で夫婦の問題を相談し、父の言動が自覚のないDVに該当するとの認識を強めて別居を決意し、同年9月に子を連れて別居した。以後、父と子の交流はない。同年10月、母が夫婦関係調整調停事件を申し立て、2021年3月、父が面会交流調停事件を申し立てた。同年8月、両事件はいずれも不成立となり、後者は本件審判手続に移行した。

 原審(さいたま家裁川越支部)は、子が慣れない相手に対して不安を感じやすい特徴を有し、父が子に接触した期間は短いので、子の負担を減じて交流を実施するためには、母の協力を得ながら子が父に慣れていく必要があること、母の父に対する不信感が根強く、子が日常的に夜泣きをし、母は精神的にも体力的にも余裕があるとはいえないことから、現状において父と子の直接交流を実施することは相当でなく、間接交流が相当であるとし、母に対して、当分の間、年に2回、子の写真及び生活の状況を記した書面を父に送付することなどを命じる審判をした。これを不服として、父が即時抗告した。

決定の概要

 父が第三者機関に相談し、当該機関より支援が可能である旨の回答を得ているほか、当該機関から面会交流を行うための具体的ルールに関する説明を受けており、直接交流を実施する際に必要となる母の協力は、一定程度限定されたものになる。子の人見知りの傾向は、保育園に通園していることや周囲の配慮により克服でき、あるいは成長に伴い自然と収まるものと考えられる。父が母に対し、直接の暴力に及んだとか、合理的理由のない暴言や継続的ないし支配的な精神的暴力があったと認めることはできない。そうすると、母に監護補助者がいることをも考慮すれば、直接交流の実施により、子の福祉を害する程度にまで母の監護力が低下すると認めることはできない。したがって、父と子の直接交流については、これが直ちに困難であると断じるに足りるだけの客観的かつ具体的な事情があるとはいえない。子の年齢及び特性等に照らせば、なお、子において、母と離れて父と直接交流を行うことができるかどうかについて、子の福祉の観点から、慎重に検討判断する必要がある。本件においては、父と子との試行的面会交流の実施を積極的に検討し、その結果をも踏まえて、直接交流の可否や、面会交流の具体的方法、頻度、内容等を検討して定める必要がある。よって、原審判は取消しを免れず、特に前記に関して審理を尽くす必要があるため、原審に差し戻すのが相当であるとした。(KI)

No.13

一時保護の措置がとられている児童と親権者との面会通信制限措置が、児童福祉法33条の2第2項に基づく適法な措置であるとした事例

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大阪高裁2023(令5)年12月15日判決
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家庭の法と裁判51号75頁
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事案の概要

 児童A(2009年生、当時中学1年生)は、父から暴行を受け、大阪府の児童相談所長は、Aを児童福祉法33条1項に基づき一時保護をした。父は、一時保護開始後にAとの面会通信が違法に制限されていると主張して、人格権に基づき面会通信制限の差止め、および、国家賠償法1条1項に基づく慰謝料を請求した。

 原審(大阪地裁)は、同所長が父とAとの再統合に向けた調整を行政指導と解し、その調整の中で父とAとの面会を制限することは、児童福祉法33条の2第2項の監護等の措置として許容されるとしたうえで、Aが父を頑なに拒否しており、父も虐待を認めず今後もやむを得ないときはAに暴力を振るうと表明していること等から、前記所長による面会通信制限に裁量権の範囲の逸脱又は濫用があるとは認められないとして、いずれの請求も棄却した。父は、面会通信制限行為は行政処分にあたるなどとして控訴した。

判決の概要

 親子間の面会通信の制限は児童虐待防止法12条1項による行政処分が唯一の根拠規定ではなく児童福祉法33条の2第2項に基づく福祉的措置により行うこともでき、同項による面会通信の制限は、一時保護の効力により児童相談所長の権限と親権者の親権との優先劣後関係が生じることで、児童相談所長の権限行使を不当に妨げる親権者の親権行使に優先して面会通信の制限を行うことができるものであり、原審のいうように行政指導の効果としてなされたものではないとしたうえで、本件面会通信制限は、児童福祉法33条の2第2項による適法な措置であり、父の人格権を侵害する違法な行為であるとはいえないとして控訴を棄却した。(KO)

No.12

審判に代わる決定に基づいてされた面会交流の実施を求める間接強制の申立てにつき、その後面会交流の条件を変更する決定がなされたことから、当該決定の確定の日以降の申立て部分が不適法とされた事例

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東京高裁2023(令5)年1月17日決定
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家庭の法と裁判50号60頁
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事案の概要

 父(債権者・相手方)と母(債務者・抗告人)は、2011年に婚姻し、子らをもうけた。2017年に子らの親権者を母と定め、和解離婚した。面会交流に関し、2018年に東京高等裁判所の審判に代わる決定(以下「2018年決定」という。)が確定した。父が2018年決定に基づき、母に対して、子らとの面会交流を実施させるよう求め、その不履行1回につき1人当たり10万円の支払を求めるなどの間接強制を申し立てた。

 2022年4月、原審(甲府家裁)は、母による履行は完全ではなく、本件申立てが権利濫用とまではいえないとして、母に対し、2018年決定に基づく月2回の面会交流の実施と、その不履行1回につき3万円の支払を命じた。母が不服として執行抗告をした。

 その後、別途係属していた面会交流事件の審判に対する即時抗告審において、2018年決定の実施要項を変更する決定がされ、2022年9月16日に確定した(以下「2022年決定」という。)。

決定の概要

 2018年決定が命じていた面会交流の実施等のうち2022年9月16日以降の実施等に係る部分は、2022年決定の確定により失効したことが明らかであるから、母は、2018年決定の当該部分を債務名義とする間接強制を求めることはできない。本件申立てのうち、2022年9月16日以降の面会交流の実施等を求める部分は不適法である。

 同日以前の面会交流については、2018年決定の定める実施要項は、原則として月2回の面会交流の実施を命じているところ、2021年1月から6月までの間に15回予定されていたうちの11回は実施されず、その理由の多くは子らの習い事、母の多忙によるもので、母の義務の履行状況は2018年決定の本旨に従ったものとはいえないし、過酷執行に当たるともいえず、本件申立てが権利の濫用に当たるとは認められないとして、原審の判断を是認した。(SH)

No.11

父が母に対し、新型コロナウイルス感染症の感染拡大中に実施されなかった父と子との面会交流について、母との間で成立した調停調書に基づき、協議の上、代替日を定めた面会交流させるよう求めた間接強制の申立てが権利濫用に当たるとされた事例

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東京高裁2022(令4)年10月31日決定
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家庭の法と裁判46号56頁
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事案の概要

 父と母は、2013年に婚姻し、2015年に子をもうけた。2018年6月、母は子を連れて自宅を出て、父と別居するに至った。2019年7月、父と母の間で、父と子との面会交流について、毎月第3日曜日、午前9時45分から午後1時45分まで、受渡場所で子を送り届ける方法により行うことを内容とする調停(以下、「本件調停」という)が成立した。また、本件調停条項には、予定日に実施できなかった場合の代替日について、第4日曜日の同じ時間帯とすること、また、子や当事者の都合により面会交流の日時を変更するときは、当該事情の生じた当事者は他方に対して速やかに連絡をし、双方協議の上、代替日を定めることの定め(以下、後者の定めを「本件代替日条項」という)が置かれた。

 父が、本件調停の調停調書に基づき、母に対し、2020年3月から5月までの間に実施されなかった父と子との面会交流について、主位的には、協議の上、代替日を定めて面会交流させるよう求めるとともに、その不履行1回につき20万円の支払を求め、予備的には、日程を毎月第1日曜日、代替日を第2日曜日、さらに第1日曜日、第2日曜日にも実施されない場合は父の指定した日時で実施するものとして面会交流させるよう求めるとともに、その不履行1回につき20万円の支払を求めるなどの間接強制を申し立てた。

 原審は、主位的申立てについて、本件代替日条項は母の給付義務の内容を具体的に定めたものとはいえないとして、予備的申立てについては、同条項に父が求めるような内容で代替日を設定すべき義務が定められていないなどとして、各申立てをいずれも却下した。父がこれを不服として執行抗告をした。

決定の概要

 本件調停条項は、面会交流の日時又は頻度、各回の面会交流時間の長さ、子の引渡しの方法について具体的に定められているということができ、特定にかけるところはなく、本件代替日条項についてみても、面会交流の日の変更を希望する当事者が行うべき義務は、具体的に定められているものであって、特定に欠けるところはないというべきであるとした。

 しかし、本件調停成立後、面会交流が実施されなかったのは、2020年3月から5月までの3回のみであり、この期間中においては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、直接的な面会交流の実施が社会的に見て困難であったといわざるを得ず、面会交流が実施されなかったことについて、母に本件条項が定める義務の不履行があったとの評価を下すことは容易にし得るものではなく、その不実施を決めた母に対して不利益を課するのは相当に酷であるとした。

 仮に3回分の面会交流の不実施について、同年6月以降に実施するとなると、面会交流の頻度が1か月に2回以上となって、子や母の負担が増大し、面会交流の頻度を1か月に1回と定める本件条項の趣旨に反するものになりかねないとした。

 以上の事情等を総合考慮すると、父が母に対し、強制金の心理的強制のもとに、前記の3回分の不実施面会交流について別途代替日を定めて面会交流を実施することを求めることは、過酷な執行として許されず、本件申立てが権利の濫用に当たるとして、本件抗告を棄却した。(B)

No.10

夫婦が別居中に、母が子らを監護する父に対して、前件調停で定められた面会交流の条件の変更を求める事案について、間接交流が相当であるとした原審判を取り消し、子らの調査を実施し直接交流の可否や面会交流の具体的方法等を検討する必要があるとして原審に差し戻した事例

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東京高裁2022(令4)年8月18日決定
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家庭の法と裁判43号54頁
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事案の概要

 父と母の間には、長女(2011年生)と二女(2016年生)がいる。母は二女出産後精神的に不安定になって約3か月間医療保護入院し、2016年11月に退院したが、実家に身を寄せて療養した。そのため、父が子らを監護養育するようになった。母の入院中から関与していた支援センターの指導の下、母と子らとの面会交流や長女の心理面接等が行われた。父は2017年1月に監護者指定の審判を申し立て、調停に付された。長女が支援センターの保健師によるプレイセラピーの際、死にたいなどと述べたりしたため、支援センターは、母と長女が交流することで長女が不安定になっていると判断し、面会交流は中断された。同年11月、父を子らの監護者とするとともに、母と子らが面会交流すること、その方法等については支援センターの指導に従い父母が協議して決定する旨の調停が成立した。しかし、母と長女との面会は再開されず、二女との面会は、2018年4月から支援センター関与の下、月1回程度の頻度で行われたが、長女への影響を懸念した父が、2019年3月以降面会を中断させた。母は2018年7月に面会交流調停を申し立てた。

 原審(東京家裁)は、長女が精神分析的心理療法による治療を継続して受け、精神面で成長し、安定していく傾向にあるが、父母間に離婚をめぐる紛争が続いており高葛藤の状態にあるため、子らが父母の葛藤状態に巻き込まれた場合の心理的影響が大きい等の理由により、双方向の間接交流にとどめた。母が即時抗告した。

決定の概要

 母の精神状態は回復し安定した状態が続いているため、母が子らの面前で子らの健全な成長に悪影響を及ぼすような言動をするおそれがあるとはいえないこと、長女は年齢を重ねるごとに精神的に安定してきており、母と間接交流を続ける中で母に対し親和的な反応を示しているため、長女が母と面会交流を再開することで精神的に不安定になるおそれがあるとはいえないこと、長女は面会交流中断後も母との面会を強く望んでいたこと、母と二女との間には直接交流を禁止・制限すべき事情はないことが認められるとしたうえで、長女の家裁調査官による意向調査実施後1年9か月が経過していることや、二女が6歳となり心情を表明できる年齢となったことから、家裁調査官による調査を実施して心情や間接交流の状況等を調査し、その結果を踏まえて、直接交流の可否や面会交流の具体的方法等を検討して定める必要があるとして、原審判を取り消し、原審に差し戻した。(KO)

No.9

子らの状況やきょうだい間の関係性等を考慮し、子らと父との直接交流を開始するのは相当ではなく、まずは間接交流を重ねるのが相当とし、長女の小学校卒業までの間接交流の方法等を詳細に検討した事例

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奈良家裁2020(令2)年9月18日審判
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家庭の法と裁判39号79頁
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事案の概要

 父と母の間には長女(2009年生)及び二女(2011年生)がいる。母は、2017年7月に、子らを連れて自宅を出て、父と別居した。

 父は、2018年2月、子らとの面会交流を求めて調停を申し立てた。父母は、2019年8月、子らの親権者をいずれも母と定めて調停離婚したが、面会交流調停は不成立となり、本件審判に移行した。

 別居後、父と子らとが直接の面会交流をしたことはない。2018年1月以前には3回子らは父に手紙を送付したが、同年2月以降は父が子らに手紙を送付したのみである。同年から2019年までの間に3回、一人10分程度の音声のみの面会交流をした。家裁での試行的面会交流は、子らが家裁への来庁を拒否したため実施されなかった。母は、父に極度の恐怖心を抱いており、心療内科等に通院し、投薬治療を受けている。長女は、2017年に自閉スペクトラム症等の診断を受け、その後も心的外傷後ストレス障害等や複雑性心的外傷後ストレス障害と診断されている。二女には格別の発達特性はなく、家裁調査官に対し、父と一人で会うのは無理で長女と一緒がいいと述べた。

審判の概要

 子らの状況やきょうだい間の関係性に照らすと、子らで同じ内容の実施要領を定めるのが相当であり、長女の卒業・進学により、その生活状況や環境が大きく変化することが見込まれることに照らすと、父と子らとの面会交流につき、当面、長女が小学校を卒業する2022年3月までの実施要領を定めるのが相当であるとした。

 長女は、同居中の父の言動に恐怖心を抱いており、直接の交流には不安を有している。また、長女は、母が離婚後も父に恐怖心を抱く姿を見て、ますます不安を強め、その性格特性から、非常に強い恐怖心や不安感を抱くに至っている。二女についても、直接の交流には拒否的であり、長女と一緒でなければ無理と述べている。このような状況では、2022年3月までの期間内に直接の交流の実施を開始するのは相当でなく、まずは間接交流の実施を重ね、子らの不安や葛藤を低減していくのが相当であるとした。

 電話による交流については、従前は可能であって、子らは、同交流を通じて、父が同居中とは異なる対応をしていることを現に認識できていたから、音声のみの電話による交流は実施していくのが相当であるとした。頻度は、子らの心情を考慮し、年3回、各長期休みに1回ずつ、時間は1人当たり20分とした。手紙や贈物等の送付については、従前の実績を踏まえて、父と子らとは、そのやり取りをし、母はこれに協力するものとした。手紙の頻度は2か月に1回、贈物については、クリスマス及び子らの各誕生日とした。加えて、月1回、子らの写真各一葉を、年l回、子らの通知表写しを、母が父に送付するものとした。

 さらに、2022年4月以降の面会交流については、当事者間で誠実に協議するものとした。(B)

No.8

父が面会交流の間接強制を申し立てた事案において、新型コロナウイルス感染症の影響によりビデオ通話方法に切替えて実施しており、何ら実施されなかったのは緊急事態宣言下の1回のみであること等により、本件申立ては過酷執行、権利の濫用に当たるとし、これを認容した原決定を取り消して間接強制の申立てを却下した事例

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大阪高裁2021(令3)年8月2日決定
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家庭の法と裁判38号55頁
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事案の概要

 父と監護者母間で、2020年12月、長女(2009年生)及び長男(2012年生)と父との面会交流について、調停が成立した。この調停条項は、月1回の面会につき、日時、面会交流時間の長さ、引渡しの方法等を具体的に定めているほか、新型コロナウイルス感染症等のり患や流行、子らの意思や状況に応じて面会方法を変更する必要が生じた場合には、別途協議することも定めていた(以下、「本件条項」という)。

 2020年12月から翌年3月まで、新型コロナウイルス感染症の拡大、父母の各職場での陽性患者の発生、父の入院など同感染症に関する事由があったため、父母の了解に基づき直接的面会交流の代替としてビデオ通話の方法により父と長男の交流が実施された。長女は、この間実施されたビデオ通話の方法による交流にはいずれも参加しなかった。また、2020年12月のクリスマス、翌年3月の子らの誕生日や長女の卒業式に、母は父と子らが直接会う機会をもうけた。

 母は、2021年3月頃、同感染症の動向や長女が中学入学後間もない時期であること等の状況から、ビデオ通話により交流を実施してほしいと申し入れた。父は、これを拒否し、直接的面会交流の実施を強く求めたため、同年4月には、間接的面会交流も含めて、何らの交流も実施されなかった。

 2021年4月、父は母に対し、本件条項に基づく面会交流の履行を求めるとともに、その不履行1回につき10万円の支払を求めて間接強制を申し立てた。父は、長女が思春期で父との関係性についてもいろいろ考えるところはあるだろうとは思っているので、長女については強硬に間接強制の申立てを維持するつもりはないと原審で主張した。

 原審(京都家裁)は、2021年5月、父と子らとの面会交流の履行を命じるとともに、その不履行につき子1人当たり1回4万円の間接強制金を支払うよう命じた。母が執行抗告をした。

審判の概要

 本件条項の内容は、引渡しの日時、場所を一義的に定めたものであるから、間接強制の方法により履行を強制することが可能なものであると認められる。

 新型コロナウイルス感染症の拡大がみられた社会情勢の下で、父母の合意の下、本件条項の定めるところから実施日時の変更や代替としてビデオ通話の方法に切り替えるなどして、適宜父に長男との面会交流は実施されていた。面会交流が実施されなかったのは、2021年4月の実施予定分のみであった。長女の不参加は、長女自身が父との積極的な交流を望む意思を有していないことの表明であったと認めるのが相当であり、父も、長女との面会交流を必須のものとは考えていないことがうかがわれるので、本件条項に基づく面会交流が実施されていないと評価するのは相当でない。他方において、母は、父と子らの直接的面会交流の機会を設けたことが認められる。本件申立て後の同年5月にも、父の了解のもと、ビデオ通話による父と長男との交流が実施されたことも認められる。

 これらの事情を総合考慮すると、同年4月実施予定分の面会交流が実施されなかったことのみをもって、義務の不履行があったと評価することは、極めて酷であるから、母に対して本件条項が定める義務の間接強制を求めることは、過酷執行に当たり、権利の濫用として許されないというべきである。

 加えて、同月には上記感染症の拡大が強く懸念され、関係地域を対象としてまん延防止等重点措置が適用されたほか、同月25日には緊急事態宣言が発令されたという客観的な情勢を考慮すると、直接的面会交流を強く求めビデオ通話による面会交流の実施を拒否した父の態度は、父が本件条項やその趣旨を順守する対応をしない一方で、母に対しては直接的面会交流させる義務の履行の強制を求めるものであるから、この点においても権利の濫用に当たるというべきである。

 よって、本件間接強制の申立ては、過酷執行、権利の濫用に当たるから却下すべきで、これを認めた原決定は失当であるからこれを取り消す。(B)

No.7

父が調停に基づく面会交流の母の不履行について間接強制を申し立て、子一人、不履行1回につき5万円の支払を命じた原決定を相当であるとした事例

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東京高裁2019(令和元)年11月21日
出典
家庭の法と裁判37号74頁
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事案の概要

 父と母の間には、長男(2010年生)と二男(2012年生)がおり、母が事実上の監護者であった。2018年10月、父と母との間で、子らと父とが月1回、午前10時から午後2時まで面会交流をする調停が成立した(引渡場所、引渡方法等の具体的定めがある。)。母は、二男の面会交流には応じたが、長男は一度も応じなかった。2019年3月、母は、二男の精神状態が面会交流の前後に不安定になり、二男が面会交流を拒否していることを理由に、父に対し面会交流の中止を申し入れたため、父は、同年4月、間接強制の申立てをした。同年5月の原審審尋期日に子らも出席し、裁判官が意向確認したところ、両者とも父との面会交流を拒絶しておらず父宅での面会交流を希望した。そこで、父母は、同年6月1日及び当月15日の午前10時から午後2時まで父宅で面会交流をする合意をした。しかし、6月1日に長男は父宅に来ず、二男も午前10時45分頃には帰宅した。同月15日には面会交流が実施されなかった。その後、母からショッピングセンター内で2時間の面会交流の提案がなされた。この間の同年7月1日、未成年者ら1人についての不履行1回につき5万円の支払を命じる決定が出され、母が同月9日執行抗告をした。なお、同月8日に、母は、父に対し面会交流の方法を見直すための面会交流調停を申立てた。この後、同年7月及び8月には、母提案の内容で面会交流が実施された。子らは面会交流時、父に拒否的態度を示さなかった。2019年5月には、父と母との間で、子らの親権者を母とし、養育費を子1人につき月4万2500円とする離婚調停が成立した。

決定の概要

 原審の審尋期日で裁判官は子らが面会を拒絶していないことを確認し、その後実施された母提案の面会交流では子らは拒絶的意思を示すことなく面会交流が実施されており、二男の精神状態不安定等に関する医師等の裏付け資料はないので、面会交流の不実施は子らの強固な拒絶意思に基づくものと認めることはできない。したがって、本件不実施は母による面会交流実施義務の不履行であり、母提案の方法での面会交流の実施や母が面会交流方法の協議のため面会交流調停を申し立てていることは間接強制決定を妨げる理由にはならない。養育費が子1人につき月4万2500円であること、その他一切の事情から各子につき不履行1回につき5万円の間接強制金の支払を命ずるのが相当であるとして、抗告を棄却した。(KO)

No.6

父母以外の第三者は事実上子を監護してきた者であっても、子の監護に関する処分として子との面会交流について定める審判を申し立てることはできないとして、祖父母からの面会交流の申立てを不適法とした事例

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最高裁2021(令3)年3月29日決定(令和2年(許)第4号)
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裁判所ウェブサイト、裁時1765号4頁、集民265号113頁、判タ1500号84頁、家庭の法と裁判41号43頁
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事案の概要

 父は、婚姻した母と子(2016年生)とともに、母の親である祖父母方で同居していたが、2017年以降家を出て別居した。その後、父は母と交替で子を監護したが、祖父母らは母による監護を補助していた。母が死亡後は父が子を監護している。祖父母らは、子との面会交流を定める審判を申し立てた。

 原審(大阪高裁2019(令1)年11月29日判決)は、父母以外の事実上子を監護してきた第三者が、子との面会交流を認めることが子の利益にかなう場合には、民法766条1項及び2項の類推適用により、子の監護に関する処分として上記の面会交流を認める余地がある、祖父母は母を補助して事実上子を監護してきた者であるから、本件面会交流を認めることが子の利益にかなうか否かなどを審理することなく、本件申立てを不適法として却下することはできない、として、祖父母の申立てを不適法として却下した原々審判を取り消し、原々審に差し戻した。父が許可抗告を申し立て、許可された。

決定の概要

 民法766条1項前段は、父母が協議上の離婚をするときは、子の監護に関する処分として子の監護をすべき者その他必要な事項は、父母が協議をして定めるものとし、これを受けて同条2項は、同条1項の協議の主体である父母の申立てにより、家庭裁判所が子の監護に関する事項を定めることを予定しているものと解される。他方、民法その他の法令において、事実上子を監護してきた第三者が、家庭裁判所に上記事項を定めるよう申し立てることができる旨を定めた規定はなく、監護の事実をもって上記第三者を父母と同視することもできない。子の利益は、子の監護に関する事項を定めるに当たって最も優先して考慮しなければならないが、父母以外の第三者に上記申立てを許容する根拠となるものではない。したがって、父母以外の第三者は、事実上子を監護してきた者であっても、家庭裁判所に対し、子の監護に関する処分としての面会交流を定める審判の申立てをすることはできないと解するのが相当である。祖父母らは、母による子の監護を補助してきたが、子の父母ではないから、家庭裁判所に対し、子との面会交流を定める審判の申立てをすることはできない。祖父母らの本件申立ては、不適法というべきである。子の監護に関する処分の申立てを却下する審判に対して即時抗告をすることができるのは「子の父母及び子の監護者」であり、祖父母らはそのいずれにも該当しないため、原々審判に対する祖父母らの抗告は不適法であるとして、これを却下した。(B)

No.5

未成年者らとの直接的な面会交流は相当でなく、未成年者らの写真の送付及び未成年者らに対する手紙の送付などの間接的な面会交流が相当とされた事例

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大阪高裁2019(令1)年11月20日決定
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家庭の法と裁判34号87頁
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事案の概要

 父母は、2010年に婚姻し、長男(2011年生)、次男(2015年生)、長女(2017年生)をもうけた。2017年12月、母は、子らを連れて父と別居し、2018年1月、父に対し、離婚及び婚姻費用分担調停を申し立てた。これに対し、父は、同年3月、面会交流調停等を申し立てた。父母は、同年10月に親権者を母と定めて調停離婚したが、面会交流調停は同年12月に不成立となり、審判手続に移行した。父は、感情の起伏が激しく、同居時には2度にわたり包丁を自らに突き付けたりした。母は、父のことを考えると怖くなり、裁判所に来るのも体調が悪くなるので、調査のため、子らを裁判所に連れてくるのは難しいが、年に4回程度、子らの写真を父の実家に郵送することは可能である旨述べた。これに対し、父は、第三者機関を利用するなどして面会交流を実現させるよう求めた。

 原審(大阪家裁)は、母が父に対する信頼を失い、かつその突発的な行動に恐怖心を抱いていること、面会交流の実施日が近づくたびに母が体調を崩し、子らに不安や罪悪感を感じさせることから、現時点においては間接的な面会交流とせざるを得ないとし、母に対し、毎年3月、6月、9月及び12月に、未成年者らの写真を合計3枚以上、父の実家宛てに郵送することを命じた。これを不服として、父が即時抗告した。

決定の概要

 原審の認定判断をほぼ是認し、母は、父に対し、面会交流をするための最低限の信頼も有していないこと、父のこれまでの行動に子らが幼いことを併せ考慮すると、安全かつ円滑な直接的面会交流を継続的に実施できるか不安が残ること、母の心情に照らせば、母が面会交流に立ち会うことは困難であり、立会いを引き受ける第三者機関が存在するかどうかなども明らかでないこと、母が面会交流実施前に体調を崩すことになれば、子らが父との面会交流を心理的に負担と感じるようになり、かえって直接的面会交流が子らの福祉を害することとなる恐れも認められるから、現時点においては、直接的面会交流を実施することは困難であるとした。その上で、母に対し、未成年者らの写真を合計3枚以上父に送付することを命ずるとともに、「年4回程度、抗告人が未成年者らに対して手紙を送付することを認め、抗告人から未成年者ら宛ての手紙が届いたときは、これを未成年者らに交付したり読み聞かせたりすることを命ずるのが相当である」とし、原審判を一部変更した。

 なお、できるだけ早期に良好な父子関係を構築することが未成年者らの福祉にかなうとした上で、原審が、長男には父との楽しかった思い出の記憶が残っており、母の拒否的感情が落ち着き未成年者らを面会交流に穏やかに送り出せるようになれば、長男も面会交流に応じられると思料されることから、母へは、父の悪口を言わず、父の悪いイメージを植え付けず、直接的面会交流の実現に努力すること、父へは、穏やかな生活及び感情コントロールに努め、養育費の支払いも努力されたい、と双方への注文を付した部分を引用した。(KI)

No.4

別居親の面会交流権は、憲法上保障されている権利であるとはいえず、国によるその行使を確保するための立法措置の不作為は、国家賠償法上、違法の評価を受けるものとはいえないとした事例

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東京高裁2020(令2)年8月13日判決
出典
判時2485号27頁
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事案の概要

 夫婦の別居により未成年子と別居することとなった別居親ら14名は、憲法上保障されている別居親と子との面会交流権の権利行使の機会を確保するために立法措置を執ることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたり立法措置を怠ってきたことは、国家賠償法1条1項上の違法な行為に該当すると主張して、国に対し、慰謝料等の支払を求めた。原審(東京地裁)は、原告らの主張を全て認められないとして請求を棄却した。原告らは、これを不服として本件各控訴を提起した。

判決の概要

 別居親の面会交流権は憲法26条の「教育を受ける権利」によって保障されているとの主張については、親の子に対する監護養育が憲法上保護されなければ、子の教育を受ける権利が保障されないとはいえないから、理由がない。別居親の面会交流権は児童の権利に関する条約9条1項、3項によって保障されているとの主張については、同条約9条1項は、子が親から引き離されることのできる場合を限定した規定であって、面会交流について定めたものとみることはできない。子の面会交流の権利を尊重する旨の規定である同条約9条3項を併せても、別居親の面会交流権を保障したものとは解されないから、理由がない。国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律第2章第3節は、親子の「接触の権利」を規定しており、別居親の面会交流権が憲法上又は条約上の権利として保障されていることを裏付けているという主張も、日本国以外の居住者に限定している前記法律16条の定めからして認め難い。国境をまたぐ親子の面会交流については、外務省が関与するのに対し、国内での別居については、何の公的フォローもないという差別的取扱いが放置されているとの憲法14条1項に基づく主張については、上記差異は、事柄の性質に応じた合理的な根拠に基づくものというべきであるから、理由がない。面会交流権は権利としての一義的明確性を有しており、憲法13条により保障されているとの主張については、そもそも、面会交流の法的性質や権利性自体について議論があり、別居親が面会交流の権利を有していることが明らかであるとは認められないから、別居親の面会交流権が憲法上の権利として保障されているとはいえない。憲法24条2項は、離婚等に関する事項について個人の尊厳に立脚して法律を制定することを義務付けるところ、面会交流を保障する法整備を行っていないのは、法の不備にほかならないとの主張については、民法766条等の面会交流に関する法制度(父母の協議、家裁の審判、間接強制)は、別居親と子との面会交流が不当に制約されることがないようにされているものといえ、個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理性を欠くものとはいえないから、理由がない。よって、本件各控訴はいずれも理由がないとして、これらを棄却した。最高裁第二小法廷は、2021(令3)年7月7日上告棄却決定をした。(B)

No.3

母による面会交流の審判前の保全処分申立てについて、子が拒絶的な姿勢を強めつつあるのは身近な大人の影響によるものであり、この状態を解消するためには早期に未成年者自身の感覚や体験を通して母を理解する機会を設けることが必要であり、母ががんに罹患し余命告知されている状況に鑑みて面会交流を仮に認めた原審の判断を維持した事例

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仙台高裁2019(令1)年10月4日決定
出典
家庭の法と裁判33号59頁
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事案の概要

 母(相手方、原審申立人)は、2016年、がんと診断され、入院して手術を受けた。その後、父母の関係は悪化し、2017年8月、父は、子(原審審判時小学5年)を連れて実家に転居し、母と別居した。子は父、父の母、父の祖母、叔父との5人暮らしである。同年12月、母は面会交流調停を申し立てた。別居後、母は子に誕生日プレゼントや手紙を送るなどしていたが、2018年1月、父の求めにより子と母とのLINE連絡は中断した。2019年1月、父母は、母の余命が1か月ないし3か月程度であると知った。父は、同年2月の第7回調停期日においても面会に応じる姿勢をみせず、母は調停申立てを取り下げた。同年4月、母は再度、面会交流調停及び本件保全処分の申立てをした。

 原審は、前回調停時の家裁調査官面接では子は母との生活を全体としては肯定的に受け止めていたが、本件調停時の面接では拒絶的姿勢を強めており、その表現内容から、子自身の体験に基づくというよりも、父やその親族等の母に対する否定的な発言の影響によるもので、子が心身共に健全な成長を遂げるには子の認識を修正し母のイメージを修復していく必要があり(本案認容の蓋然性)、かつ母が余命告知を受けたという状況に照らして面会の機会を早急に設ける必要がある(保全の必要性)と判断し、月1回1時間程度で、父が指定する者の立会いを可能とする面会交流を仮に定めた。父が抗告した。

決定の概要

 原審判の認定説示に加え、「……未成年者の過剰ともいえる拒絶的な反応をみれば、未成年者は、現在身の回りの世話を頼っている環境において、相手方の情愛を肯定的に受け止められる助言を得られておらず、むしろ、霊的なものによる攻撃等という容易に払拭することができない説明が未成年者に強い影響を及ぼしていることが認められる。未成年者の拒絶的姿勢が、身近な大人の影響によるものであることが、単なる抽象的な可能性であるとはいえない」、「将来、未成年者が母の情に思いを致す時が来るかもしれないことを考慮するとき、自ら面会交流を拒否したというようなことになれば、それは、未成年者に取り返しのつかない悔いを残してしまうことにもなりかねない」とし、母にとって、「面会交流の場で直ちに自らの思いが未成年者に伝わることは期待できず、むしろ未成年者の心情を受け止める機会にとどまることも覚悟すべきではあるが」とも述べた上で、、母の病状に鑑みれば、未成年者の福祉のため早期に面会交流を実施すべきであるとして原審の判断を維持した。(B)

No.2

母が審判で定めた面会交流を実施しないとして父が面会交流調停を申し立て、面会交流の内容を特定して前件審判の主文のうち必要な部分を変更した事例

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福岡家裁2020(令2)年1月10日審判
出典
家庭の法と裁判30号88頁
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事案の概要

 申立人(父)と相手方(母)は、2010年に婚姻したが、2011年に母が未成年者(2011年生)の出産準備のため実家に戻って以降別居した。別居当初父子は不定期に面会交流を行っていたが、2015年11月に未成年者の親権者を母と定めて離婚してからは実施されなかった。父は2016年11月、面会交流調停を申し立て審判移行となった。審判では、概ね面会交流を実施する月(毎年3月、7月、12月)と回数(各1回)、面会時間(2時間)などが定められたが、面会交流の具体的な日時、場所及び方法については、母が、面会交流をするのであれば当事者間で連絡を取り合い調整する意欲意思を見せていたことから当事者間の協議に委ねることとされた。しかし、母は面会交流義務を履行せず、裁判所による履行勧告にも応じなかったので、父は2019年6月、再度面会交流調停を申し立てた。母は調停期日に出頭しなかったため審判移行となった。

審判の概要

 「申立人と未成年者との面会交流を拒否する相手方の姿勢は強固なものであると認められ」、相手方は「申立人と未成年者との面会交流について、申立人との間で協議することも拒否しているものと認められる」ことからすると、「前件審判の主文に至った理由として説示された、相手方は直接の面会交流には消極的であるものの、面会交流を実施するとなれば、当事者間で連絡を取り合って具体的な調整を行う意思を見せている、という点は、現時点において考慮することはでき」ないとし、「面会交流の確実な実施のためには、監護親である相手方がすべき給付の内容を特定すべきである」としたうえで、日時を「毎年3月、7月、12月の各第4土曜日の午前11時から午後1時まで」、引渡場所を未成年者が見知った場所である大型ショッピングセンター「E前」とするなどして、前件審判の主文を一部変更した。(KO)

No.1

面会交流申立てにつき、間接交流のみを認めた原審判を変更し直接交流を認めた事例

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大阪高裁2019(令1)年11月8日決定
出典
家庭の法と裁判29号78頁、判時2447号5頁、判タ1476号74頁
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事案の概要

 抗告人(夫)と相手方(妻)は、2010年に婚姻したが、2013年に妻が子ら(2010年生及び2013年生)を連れて出て別居した。2015年に月1回程度の面会交流を定める別居調停が成立した。夫婦の不和の原因には夫の女性関係がある。別居後、父子は面会交流を続け4人で海外旅行をするなどもした。妻は2018年頃から心療内科に通院し、その頃、夫方で交際女性と対面して以来、夫婦の関係は悪化した。夫は面会交流調停を、妻は離婚調停を申立てた。

 原審は、子らは父を慕う気もちはあるが、長女は、夫婦の関係修復に十分に答えない父と面会することは母を悲しませると案じており、面会が長く途絶えることは面会の機会を奪うので、適宜の時期に直接面会の再開について協議を始めるのが相当であるとして、前件調停の実施要領(直接交流)を間接交流に変更した。父が抗告した。

決定の概要

 「長女は抗告人に会いたいと思う一方、相手方の心中を慮って会うことを躊躇するという忠誠葛藤に陥っており、この状態が続けば、長女に過度の精神的負担を強いることになる。したがって、抗告人と未成年者らの直接交流を速やかに再開することが未成年者らの福祉に適うと認めるのが相当である。」「相手方は、抗告人との接触を避けることが望ましいと診断されているが、未成年者らの年齢(9歳、6歳)や発達状況からすると、当事者のいずれかの目が届く範囲の短距離であれば、受渡場所まで未成年者らだけで歩いて行くことは可能であるから、相手方と抗告人が直接対面することなく未成年者らの受渡しができないわけではなくい。したがって、相手方の心身の不調は、直接交流を禁止、制限すべき事由にはならない。」として、原審を変更し、具体的な実施要領を定めて、月1回7時間の直接面会を命じた。(S)